ピーンポーン。
遠くの方でインターホンの音が聞こえるのと同時に、急に心臓がバクバクと大きく打ちはじめる。
久々に立った、蒼空んちの玄関前。
全国大会常連のバレー部所属で、めったに家にいることのない蒼空だけど、今日は珍しく部活が休みで、家にいる……はずなんだ。
だって前に『春休みなのに、四月一日しか休みがねえって、どういうことだよ』ってぼやいてるのを聞いたから。
『柚月か……どうした?』
ちょっと眠そうな蒼空の声。
さては親が仕事でいないのをいいことに、今まで寝てたな。
「ねえ。わたしまだM-1の録画観てないんだけど」
『は? もう四月だぞ。なに言ってんだよ』
「でも、観てないんだもん。一緒に観よ」
『……』
しばらくすると、ぶつんっと通話が切れ、ガチャッとカギの開く音がする。
「……入れば」
「うん。……ありがと」
よそよそしい蒼空の態度に、胸がぎゅっと苦しくなる。