去年のクリスマスイブに、幼馴染の蒼空(そら)に告白された。


「何言ってんの? わたしたちが? ありえないでしょ~」


 学校では、軽口を叩きあってばかりだからって、夫婦漫才コンビだなんて好き勝手言われてて。

 まあ実際のところ、お互い男女の仲っぽい空気になったことなんて、今まで一度もなかったんだけど。

 それこそ蒼空んちのリビングで、お笑い番組の録画を一緒に見ては、ゲラゲラ笑うような仲で。

 十センチの距離にいたとしても、ドキドキしているのはわたしだけ。


 ——ずっとわたしの片想いだって思ってた。


 まさか蒼空も同じ思いでいてくれたなんて、考えたこともなかった。

 だから、動揺しすぎて、思わず冗談みたいに笑って流しちゃった。

 そんなことがあってから、蒼空んちのインターホンを押したことは、まだ一度もない。

 だって……告白を断った相手の家に行くなんて、どう考えたっておかしいでしょ?


 十センチだった距離が、何メートルにも広がって。

 あのときのことは、正直後悔しかしていない。

 でも、どれだけ後悔したって、時間は戻ってはくれない。

 だったら、今度はわたしが勇気を出すしかない。

 ひょっとしたら、もうわたしのことなんか忘れて、別の子に恋をしているかもしれないけど。

 それでも……もう一度距離を縮めたいのなら、わたしがなんとかするしかないんだ。