* 「お母さん、待って。どこに行くの?」 私を置いていかないで。 何度そう叫んでも、母はどこか悲しそうな顔で微笑むだけ。 「やだ、お母さん!お母さん……っ」 そう精一杯手を伸ばすけど―― 私の大好きだった母は、そのまま振り返ることなく、真っ暗な闇の中へ消えてしまった。 「待って、待ってよぉ……」 ひとりすすり泣く私に、 「大丈夫?どうして、泣いているの?」 誰かがそう、声をかける。