——大学1年生の夏


「凪(ナギ)ー!こっちこっち!」

ぼーっと快晴の空を見上げていた私は、ふと我にかえり、友達の凛(リン)が食堂の前で大きく手を振って呼んでいるのを見つけた。

私はすぐに凛の所へ走った。

「ごめんごめん!ぼーっとしちゃってた…。お腹すいたね」

「ほんとだよ〜!何回呼んでも気づかないから焦ったんだからねっ」

そう言って私たちは、いつもと同じ日替わり定食を頼んでいつもと同じ席に座った。

「凪はもう大学生活に慣れた?」

「ん〜少しずつかな。まだまだ分からないこと多いけどね。凛がいてくれて本当に良かったよぉ」 

凛は嬉しそうに笑った。

「やっぱり凪は可愛いなぁ〜!もう1年の中でも有名になってるよ。可愛い子がいるって!」 

私はご飯を口に沢山含めながら大きく首を横に振った。

「そういえば凪の高校時代の話とか聞いたこと無かったけど、やっぱりモテてたでしょ?」

予想外の質問に私は黙り込んでしまった。

興味津々で、いつでも話を聞く準備は満タンですと言わんばかりに、凛は私の目をまっすぐ見つめてくる。

ここまでくると”話す”という選択肢しか残っていないのだ。

私は少しの間黙っていたが、分かったと言ってようやく口を開いた——