「お邪魔します」
 彼女の家は普通の家という感じだった。母親と一緒に住んでいるらしい。 
「涼木さん、家の人はいいの?」
「どういうこと?」
「お邪魔してもいいのかなって」
「ああ、大丈夫だよ。だってもう帰ってこないから」  
 明るい声で彼女は言う。
「そう」
 僕たちの会話はそこで一回止まった。そして涼木さんが過ごしていると思われる部屋に案内された。
「座ってくつろいでて」
 涼木さんはにっこり笑って部屋を出て行った。彼女の部屋は漫画とベット、机があった。今、目の前にあるのは小さい折り畳み式机だ。 
「ただいま、ジュース持ってきたから飲んで」   
 ゆっくりとドアが開いた。
「うん、ありがとう」
「ところでさ、勝手に連れてきちゃったけど君の方こそ親の人とかいいの?」
 彼女の不安そうな顔を初めて見た。明るいところしか見たことなかったから少し可笑しい。
「僕の方も大丈夫だよ」