「なんで?」
「ほら、私ってデートしたことないじゃん」 
 そう言う彼女はどこか自慢げだ。
「だから死ぬ前にデートしたいなって」
 なるほど言うことは分かる。
「死ぬ前なのにそんなことでいいの?」
「うん、だって、後七日しかないんだよ。した事ない事やりたくない?でも、小野くんがいいならね」 
 なぜか自分から誘ったのに遠慮している。
「僕は大丈夫だけど」
「じゃあデートしようよ」
 彼女が勢いよく立ち上がった。そして机に座っている僕の手を取った。 
「えっ!、今から?」 
「?」                     「今行かないでいつ行くの?」 
 彼女は不思議そうな顔をしてこちらを見た。
「たしかに」
「行こう?」  
 彼女はとても楽しそうな顔で教室を出た。
 僕は誰も居なくなった教室は少し寂しいなと頭の隅で考えながら教室を後にした。