「ねえ、久しぶりだね」
 そうイタズラっぽく笑っているのは隣の席の涼木 光さんだ。 
「おはよう」
 僕は、読んでいる本を閉じて顔をそっとそっちに向けた。
「おはよう」
 涼木さんは相変わらず笑っている。
 夏だからか、外からの風が気持ちいい。
 窓側の席の涼木さんの髪がゆれている。席は一番後ろだ。いい席を当てたなとつくづく思う。
 そんなことを思っていたらいつの間にか魂が抜けていたらしい。隣の席から大きな声が聞こえてきた。
「ねえ聞いてる!」
「ごめん聞いてなかった」
 驚いて慌てて返事をした。
「日曜日に地球が終わるらしいね」
「そうだね」
「ねえ、小野くん」
「なに?」
「私とデートしようよ」 
そう言った彼女の顔はイタズラっぽく笑っていた。