閉店まであと20分

店内にいた客のほとんどは会計を済まして退店するが、MITSUKI似の客はまだ来ない。


音は締め作業のついでに売り場をまわると、男がうずくまっている

音「お客様、大丈夫ですか…?」


男は反応しない

音「もし動けないようでしたら、救急車を呼びましょうか…?」

MITSUKI似の男「いや、救急車だけは……やめてください……
すみません、少し休めば落ち着くと思うので…」

男は息切れしながら伝えてきた


音「ここにいるのも何ですし…すぐそこに休憩スペースがあるので、そこまで立って歩けますか?」

男「あぁ…はい……」

男は壁に手をついて立とうとするが、フラついている。

音はバックヤードで締め作業をしていた年配の男性パート職員が近くを通ったため呼び止める

MITSUKI似の男はパート職員の肩を借りて休憩スペースまで行き、椅子に座る。
目の前のテーブルに体を預けた。


音は無料提供の水を紙コップに注いで、テーブルに置く

音「良かったらどうぞ…」

男「ありがとうございます…助かりました……
後はもう大丈夫なので…」

自分に構うなと男の態度から見て取れる

音「ですが……」

男「…店員さん、goalのファンでしたよね?……MITSUKIに似てるからって俺に構っても、別にどうにもなりませんけど……」

音は血の気が上がる思いを堪え、冷静に対応する。

音「……お客様がどう捉えようと構いませんが、私はお客様が誰であっても、店内で体調を崩されて、なおかつお連れの方もいないのであれば、同じ対応をしておりました。
ただ、私が良かれと思ってした行動が、お客様にとって不快であったのなら、申し訳ございませんでした。」

音は男に頭を下げた

音「では、私は失礼します。
後少しで閉店時間となりますが、お客様のタイミングで大丈夫ですので」

男は何も言わず、音の方を見るわけでもなく、ただ俯いている。

音(あの人、昨日の雰囲気とは全然違った……体調が悪くて気持ちに余裕が無いだけかもしれないけど…

MITSUKIに似てる事で今まで嫌な思いも沢山してきたのかな…

けどそれなら、髪型や服装にも気を使うはずだし…
どう見ても自分から寄せてるとしか思えないんだけど)


音はますます混乱していく