僕は園田様の来し方を想像した。

3人の子を抱えてほぼ母子家庭。
誰かが病気になっても、力仕事が必要でも、彼女がひとり歯を食いしばって何とかするしかなかっただろう。

ご主人は海の上。
自衛隊は機密事項が多いから、どのあたりを航海していつ帰るのか、家族にもはっきりとは言えないと聞いたことがある。
ケータイもなかった昔なら、何の連絡手段も無く、相談さえできなかったに違いない。

少しのチャンスでも会いたいと子どもたちを連れて駆け付けた港。
怒鳴り散らすというご主人は可愛がってくれただろうか。

肉体を鍛えた夫から罵声を浴びて、縮こまる彼女が目に浮かぶ。
そんな状況で自分の言い分を主張しようとするなら、相手の圧に匹敵する怒りをぶつけないといけなかったのかもしれない。

彼女の中に同居する気品ある老婦人と激高する老婆。
それは、そんな結婚生活から生まれたのかも、と思った。