数日後、彼女はまたやってきた。
今回もシャンプー・セットで僕が担当する。

「お湯はぬるめでしたね」「襟足はしっかりですよね」
言われる前に声をかけると、台の上でコクリと頷いた。
「あんた、覚えがいいな。頭がええんやわ」

当然だ。自慢じゃないが、大学の経営学部を出てからの美容専門学校卒。
知識や記憶力では、ほかの美容師に負けないつもりだ。
カットの技術だって学校ではトップクラスだった。

「園田様がちゃんと教えてくださったからです」
ここは客を持ち上げておく。接客の基本だからな。