今から授業に出たって…はぁ…面倒が目に見えるよね。

「さゆみん、同じクラスなら良かったんだけどな…俺が一緒ならおかしな好奇心を払ってやれるのに」

そういうことだよ、クニチカ。クニチカにはサラッと出来ることでも私には無理。だからクニチカがカッコいいってことにもなるんだけど。

「学園長、ひとつお願いを聞いて欲しいんですけど」

クニチカの声にじいちゃんが

「謝罪は頂けなかったが“引責”とおっしゃるからには責任と非があったことを学園側が認めておられるんだ。被害者の邦親くんのお願いのひとつやふたつは聞き入れてくださるに違いないよ。遠慮なく言いなさい。紗友美も同じだよ」

と、ゆったりと伝える。

「アタシはいいや…特にない」
「本当に?面倒がらずに考えて、さゆみん」
「うふっ…紗友ちゃんの面倒がってるの、バレてるわね」

ユキちゃんの“バチッ”と音がついていそうなウインクに一瞬固まったクニチカと、胸の前で指を絡めて手を組んだ彼のお母さんをボーッと見ながら、クニチカの性格はお父さん似で顔はお母さん似なのかな…と思った。

「お願いしていいですか?」
「ああ…はい。校則に違反するようなことでなければ…はい。いいですよね、学園長?」

寝耳に水の減給に不満を隠せていない主任が不機嫌に言うと

「そっ…うだね、どうぞ」

学園長が小さくクニチカに言った。

「来年のクラス、俺と西名さんを同じクラスにしてください。絶対に」