汚いチョンマゲとダサいピアス…俺と同じネーミングセンスのさゆみんに頷く。ギャラリーが湧き上がり過ぎて騒がしいのが都合よく、さゆみんの指示は俺にしか聞こえていない。

「クニチカ、アタシを手伝うような余計なこと考えないでいいから、二人に集中」
「うっすっ、さゆみん。さゆみんのことは信じてるから大丈夫」
「ん、アタシもクニチカを信じてるよ。あれだけ走れる長い足を存分に使えば、ケガしないから」
「うっすっ、さゆみん。さゆみんもケガしないで」
「ん、この前の3人とはメンバーチェンジしてるけどたぶん大丈夫」

あ…そうか…ホントに大丈夫か?と聞き直そうとした時

「ナオキ兄が仕切ってくれるの?ルールあり?」

さゆみんがローファーで“ザッ…”と砂を泳がせ、少し大きく言った。

「仕切るのはいいよ。ルールって西サユの希望は?一応永中にも聞く。ルールに希望はあるか?」

なんでかやる気満々の正季くんがギャラリーの真ん中に進むと、左右の手のひらを上にして俺達をヒョイっと呼ぶ。

「特にない」「早くやろうぜ」

俺担当の汚いチョンマゲとダサいピアスがニヤリと言うと

「西サユは?」

正季くんは俺でなくさゆみんにだけ聞く。

「ハクセン希望。所持品チェックだけして」

さゆみんが応えると

「「「「「ハクセン?」」」」」

無数の声がした。

「西サユ、もうちょい説明」
「ん。白戦は武器を持たず素手で戦うことだよ」