「潤、今日も曲作るの?」

冬が終わり、少しずつ暖かくなってきた三月のある休日。

俺はいつものように、優奈の病室に訪れていた。

気管支が弱いせいであまり声が出ていないけど、俺と優奈しかいないこの部屋では、そんなことは気にならない。

「あー、まぁ、そうかな。納期があと少しのものがあるんだ」

「そっかぁ、私、隣で見ててもいいかな?」

「いいよ。俺、そっち行く」

「うん、ありがとう」

穏やかな性格の優奈の癖なのか、目を細めて微笑む。

「……そういえば、優人に会ったよ」

予め撮っておいたメロディーに、細かくサウンドを重ねて、ひと段落着いたところで、真剣にパソコンを覗いていた優奈に声をかける。

「本当?優人、最近彼女さんか好きな子ができたらしくて、なかなか会えないの」

優奈の弟の優人は、優奈に似て優しく、真面目な性格で、姉である優奈のことも大事に思っている。

そんな優奈にしばらく会わないほどという事は、それほどその子のことが好きなんだろう。

「へぇー、それは初耳だ。今度聞いてみるよ」

「ふふっ、優人、言うかな~?」