優奈がすっかりいつもの調子に戻って、録音を始める。

優奈の体力的にも、……お金的にも、今日一日で取り終わりたいから、時間を無駄にすることは出来ない。

まあ、そんなことを気にするまでもなくすぐに録音は終わったけど。

単刀直入に言うと、優奈は全然昔と変わっていなかった。

美しく、どこか儚い優奈の歌声。

世界で一番好きな歌声。

世界で一番好きな人の、歌声。

「ありがとう、優奈。俺はこれを家に帰ってすぐに編集するよ」

「……ん」

やっぱり、声が出なくなって来ているらしい。

無理に歌わせない方がよかったかもしれないと、俺が後悔している時、優奈は途切れ途切れに、言葉を綴った。

「きょく、できた、ら、せけんに、公開、してねっ!」

あの笑顔で優奈はそう言った。

そして、それが優奈の、最後の言葉だった。