「優奈、大丈夫?」

「う、うん!大丈夫!気にしないでっ」

いや、気にしないでって言われても……。

今日は優奈にとって数年ぶりの外出。

もちろん、医者には許可を取っている。

歌を録るとなると、病院では出来ないから、

一番近い録音スタジオを借りている。

それよりも……。

いつもより少し重みがある袖を見つめて、もう一度優奈を見る。

……こんなことされたら気になるよなぁ。

数年ぶりの外出で不安なのか、優奈は病院を出てから俺の腕を握って離さない。

「で、で?私は何を歌えばいいのかな?」

「……これ」

「これって……」

<夜空に輝く 星たちのように>

<俺は君にたくさんの愛を 伝えたい>

<君は俺にとって かけがえない人だから>

いつか、優奈に聞いてもらった、未完成だった曲。

優奈に歌ってもらえることになって、いちばん最初に思いついた曲だった。

「嫌、だった……?」

歌詞表を受け取っても何も言わない優奈に不安を感じて恐る恐る聞くと、優奈は小さく首を振る。

「違うの……嬉しい、の……」

大きな瞳にうっすらと涙を溜めている優奈。

それだけで俺は、満足だった。

「……でも私、何年も歌ってないから、下手かも……」

「大丈夫。そうなったら笑ってあげるよ」

無駄に顔をきめて、優奈にキランと歯を見せる。

「もうっ!潤ってばっ」