覚えて、ないのかな……?

      ☆ ☆ ☆

「体調は安定してますね。霧島さん、どこか痛いところとかありますか?」

「いえ、大丈夫です」

優奈はそう言いながらも、なにか納得いってなさそうに、目線を窓に向けていた。

「優奈、なにか隠してる事ない?」

「……か、隠してることって?」

医者が出ていって、俺はすぐに優奈に詰め寄った。

やっぱり何か隠していることがあるらしく、分かりやすく目線を下げている。

「優奈、この前みたいに急に倒れられたら俺、もう心臓が持たないから」

「……こえ、が……」

俺の押しに負けたのか、優奈は渋々口を開いた。

「声が、思うように出なくて……」

……っ。

医者の言う通り……。

「多分、そのうち出なくなる、かも……」

でも大丈夫!体調はなんともないし、声が出なくても何とかなるから!そう言って優奈は強がった。