なんだよ…。



どうしたんだよ本当。



しっかりしろよ。



でも、苦しそうだったな…。



はぁ…。



あの後、大きな発作を起こしてなければいいけど。



想像以上に警戒心は強いし、下手に動くと余計に心を閉ざしてしまう。



どうすればいいんだ…。



ずっとここには来てないし、これからも来ないんだろうな…。



「せんせ?」



明日もまた、高校に行ってみるか。



彼女に会う方法はそれしかないし遠くからでも見守るか。




でも、それってただのストーカーだよな?




「佐々木先生!」



「え?」



「ぼーっとしてどうしたんですか?」



「いや。何でもない。」



看護師にまで心配されて、本当情ない。



まだ仕事中だしな。



残っている仕事を早く片付けて頭を冷やそう。



俺は、ほかの患者さんのカルテのデーターを整理していった。



最後のカルテは…



あ…。



『楠 汐帆』

俺は、パソコンから手を離ししばらく固まっていと後ろから近藤さんに声をかけられた。




「佐々木先生。もしかして、汐帆ちゃんのこと考えているんですか?」



「ああ。」



「やっぱり、汐帆ちゃん。体調悪そうでした?」



「想像以上だった…。



そういえば、近藤さんって小児科にいた時の楠さんの担当看護師だったんですよね?」




「はい。」




「その時の彼女はどんな感じでした?」




「珍しいですね…。佐々木先生が、そんなに患者さんのことを気にかけるなんて…」




近藤さんに何かを見透かされているような気がして、慌てて言葉を付け加えた。




「いや。まだ高校生であって家庭環境も悪いんですよね。一人暮らしとのことですし、発作も起きたら下手したら命に関わってきますよね。」




看護師にこんなに動揺したのは初めてだ。




「まあ…。実際難しいですよ。汐帆ちゃんは。



あの子が1番、心を許していた山城先生から主治医の先生が変わったことに、大きく動揺してしてましたし。余計に警戒してるんだと思います。


山城先生が、主治医の先生が変わることに対しては担当が変わる直前まで彼女のことを診ていました。ですが、彼女の負った深い心の傷が原因で塞ぎ込みになっているんです。そう簡単に信用出来なくなってしまったんです。



佐々木先生?佐々木先生の目から見て危ないと感じているなら、汐帆ちゃんはもう限界だと思います。山城先生と連絡を取って、すぐにでも彼女をここに連れてきて治療をしないと手遅れになるかと。」




「そう…だよな。」




近藤さんの言いたいことは痛いほど分かる。




思った以上に、警戒心は強いし元々色白なんだろうけど血の気の抜けた顔色は相当我慢していることが分かる。



彼女の顔色や表情を見るからに相当苦しいと思う。




そこまでして、病院に来ないのにはきっと大きな理由があるはず。




病気の治療も、心の治療も俺が責任もってしていく。




彼女を医師としても、1人の男としても守ってみせる。



俺は彼女のカルテに『要観察』の項目にチェックをつけてからカルテを閉じた。