「楠さん、知らないの?この街では佐々木先生有名なんだから。

佐々木先生のこと、知らない人なんていないのよ?」



「そうよ。佐々木先生と保健室の咲月先生は美男美女兄妹なんだから。

っていうか、うちの学校の女子は知らない人なんていないと思うよ。

みんな風邪引いた時は、佐々木先生目当てで診察に行ってるくらいなんだから。

それに、佐々木先生のこと狙ってる子たくさんいるのよ。」



「今まで女性の影なんてなかったのになぁー。


ねえ、本当に付き合ってる訳じゃないのね?」



はぁ…


本当にめんどくさい…


「だから、付き合ってないって。しつこいんだけど。」


「じゃあ、どういう関係なの?」


食い気味で見つめられるこの視線から逃れられるわけが無い…


主治医というべきか。


だけど、私が病気を持っていることは誰にも話していない。


というか知られたくない。


中には薄々気づいてる人もいるらしいけど。


ただの知り合い?


ってだけだと、送り迎えなんてしないし…



だけど、何も思いつかなくて



「……知り合い。」



やけにしつこい目の前の女子にそう答えていた。



「なんだ。残念。」


そう言いながらも嬉しそうな表情を浮かべていた。


それから、1時間目を知らせるチャイムがなりようやく静まり返った教室。


なんだか…


朝からどっと疲れたな…


これだから女子は…


あの無駄に高いテンションについていけない。


騒ぐのは自由だけど、私を巻き込まないでもらいたい。


もう、明日からはいつも通り電車で登下校しよう。