ーSide 汐帆ー



入院してから2週間経った頃、症状も何とか落ち着き退院することが出来た。


2週間集中的に治療をしていたからか、久しぶりに体調が良かった。


「汐帆、診察するからそこに座って。」


千紘先生に誘導され、ソファーに腰を降ろす。


学校や、外出する前は必ずこの診察にクリアしなければいけなかった。


これが医者と暮らす私の宿命というか、何があったとしてもこの診察からは逃れられない。


「…今のところ大丈夫とは思うけど、あまり無理はするなよ。」


「うん。」


「それから、これこの部屋の鍵。」


「えっ?何これ、カード?」


「もしかして初めて見るのか?

この部屋はオートロック式の部屋だからそれがないと絶対にこの中には入れない。

だから、外に出る時は忘れずそれを持って出るんだからな。

まあ、もし忘れたなら俺の病院で待ってればいいけど…

それは嫌だろ?」


「うん。嫌。」


「そんなに嫌がるなよ。それから、汐帆。これから一緒に暮らす上で約束して欲しいことがあるんだけど…」


「約束?」


「ああ。俺の前では何も我慢しなくていい。もっと汐帆は自分に欲があっていいんだよ。だから、何も気にせず言いたいこと言ってほしい。

一緒に暮らして、気を使う関係なんて俺は望んでない。

だから、安心して俺のそばにいろよ。」


千紘先生にまっすぐ見つめられ、私は頷くしかなかった。


今かけてくれた言葉以上に、その眼差しが私の全てを受け止めてくれているかのようだった。


「よし。じゃあ、今日は汐帆の学校まで送っていくから。車に乗って。」


「え!いいよ!今日は体調もいいし、学校くらい1人で行くから!」


「ダメだ。まだ退院したばかりで体調だって万全じゃないんだから。


それに、こういう時は遠慮しないで素直に甘えておけばいいんだよ。」


「…わかった…。」