ーSide 近藤杏桜(あずさ)ー


佐々木先生から汐帆ちゃんが目を覚ますまでそばにいてほしいと言われ、点滴を持って汐帆ちゃんの病室へ向かうと見慣れない汐帆ちゃんの姿があった。



目元に保冷剤が巻かれたタオルがあって、佐々木先生に状況を確認したら泣いた後ということ。



こんな様子は彼女を担当してから初めて見る姿だった。



小児科に入院してた時の汐帆ちゃんは、点滴をしても採血をしても辛い治療があったとしても表情1つ変えずに平然としていた。


無表情で、無口で…



だけど…



孤独を必死に隠しているようにも思えた。


その様子はあまりにも子供とは思えなくて子供らしさというものはどこにもなかった。


それに…


汐帆ちゃんの母親は入院していた期間はいつも面会になんて来なかった。


そんな様子だったから、汐帆ちゃんは入院していた時の着替えも自分で洗濯をしていた。


汐帆ちゃんの悩みや不安なことは何も聞くことなんてできなかったのに…


その時、私に出来たことはなるべく汐帆ちゃんが寂しい思いをしないようにそばに居ることだった。


きっと、佐々木先生が汐帆ちゃんと心を少しでも開いてくれたんだろう…



少しだけ汐帆ちゃんの表情の変化が見受けられてほっとした。



点滴を交換していると汐帆ちゃんは目を覚まし驚いた表情をしていた。



そういえば、私がこっちに移動したこと話せてなかったんだよね。



小児科を退院してからしばらく汐帆ちゃんは通院に来なかった。



正直、移動を決めたのは汐帆ちゃんが少しでも安心出来るようにと移動の希望を出していた。



これは完全に私の独りよがりだけど…


全く知らない環境より、私がいることで彼女に安心してもらいたかったから…


だからまた、汐帆ちゃんと再会出来たことが嬉しかった。


これからも汐帆ちゃんのそばで気持ちの面でも汐帆ちゃんのことを支えていきたい。