とある賢者の執着愛ーー貴女を他の誰かに取られるくらいなら

「畑のお世話はジョシュアに任せてもいいかしら?」

「かしこまりました。その代わり、お嬢様はお部屋で大人しくしていて下さいね。読書や刺繍をしたければご用意しますが?」

 パチリ、赤と青の瞳が瞬く。

「せっかくだけど、どちらも必要ないわ。ゆっくりふて寝させて貰う」

「はは、それはそれは。どうぞ、気が済むまでお楽しみ下さいませ」

 ジョシュアは恭しく承知した旨を示すと、ハーブティーへチョコレートを添えた。

 身体の毒素を抜いているらしいのにお菓子など食べていいのか、迷うオリヴィア。すると白手袋をはめた人差し指か唇の前へ立てられる。

「ジョシュアってば。私との間に幾つ隠し事を作るの? お父様にバレても知らないんだからね」

 包みを開け、オリヴィアは好物を口にする。どんなお茶会に出される菓子より、ジョシュアのポケットから出てくるチョコレートの方が美味しい。

「私は執事である前に、オリヴィアお嬢様の味方。そのお嬢様が悲しんでいるのに何もしないなんて出来ません。どうです? 私のチョコレートには元気の出る効果があるんですよ」

 得意気に語るジョシュア。

「そうね、賢者様や魔女の呪い(まじない)は信じられないけれど、あなたの魔法なら信じてあげてもいいかな」

 口溶け滑らかなチョコレートはオリヴィアの心も柔らかくする。
 ジョシュアに指摘されるまで自分が悲しんでいると気が付けなかった。

 オリヴィアは胸に手を当てて、肌身離さず身に着けてある首飾りを寄せる。