「結論、私はこのままだと何百年前に亡くなった賢者様の花嫁になるって流れで、一生独身って訳? それって」

 七代目ブラッドリー当主、オリヴィアは俯く。肩を震わせ、膝の上で拳を握ると天井を仰いだ。

「ーー最高じゃない!!」

 暫く溜めると嬉々とした表情で呟き、なんなら踊りだしそうな胸中を抑える。隣国の王子に婚約を破棄され落ち込む様子は微塵も感じられない。

 むしろ彼女のそんな態度に両親が泣いてしまいそう。何故ならオリヴィアの他にブラッドリーの血を引く者がおらず、家が途絶えるからだ。

「お父様、お母様、そんなに落ち込まないで? 私はね、良い機会だと思うのよ。あんな石を有り難がるのはもう終わりにしましょう!」

 一族が賢者より授かった由緒あるダイヤモンドをあんな石と言い切り、オリヴィアは席を立つ。

 左目に異常が現れた今、彼女を妻に迎えようとする権力者はおろか、一般男性も居ない。そうなると修道女になる道しかないだろう。賢者との契約をお伽噺扱いする性格で神へ仕えられるのかは置いておいて。

「待ちなさい! オリヴィア。話はまだ終わっていないぞ!」

「終わっていないと言われても……」

「ブラッドリー家を絶やすなど、先祖に顔向けが出来ないじゃないか」

 父親が存命でありながらオリヴィアが当主の座についているのも、ブラッドリー家が女性に祝福が多く現れるからで、ことオリヴィアはその傾向が強かった。

 この美しい容姿を描きたい、歌いたいと芸術家が集まり、オリヴィアを讃える。

 またオリヴィアは出自を奢らず、誰にでも優しく平等に接する為、人望も厚い。