「今日は他に生徒いないから良いけど、他の日には絶対持ってくんなよ」

「…分かってる…」

私が慎ちゃんの生徒になってから、慎ちゃんは冷たくなった。

今は2人きりだから『羽留』って呼んでくれるけど、学校では基本伊豆野って呼ばれるし必要な会話以外で慎ちゃんから話しかけてくれることはない。

他に人がいる時は目も合わせてくれない。

本当で突き放してないと分かっていても、悲しいものは悲しい。

そんなに、私が生徒になるの嫌だった?

慎ちゃんと少しでも一緒にいたくて、慎ちゃんのいる高校を受験したのに…。

「…ねぇ慎ちゃん、結婚して?」

「無理。羽留はあり得ない」

毎年のことだから、また同じ答えだろうなって分かってはいるが、今回も私の心はズキッと痛んだ。

「ねぇ慎ちゃん。私はあり得ないって言った理由、私が18歳になったら分かるって言ってたの覚えてる?」

「あー、そういえばそんなこと言ったな」

慎ちゃんは口をモグモグさせながら答えた。

どうでも良さそうな顔…。

「そんなことって…、私にとっては大事なことだよ!ちゃんと教えてね!?」

「羽留が18になって、気が向いたらな」

「気が向いたらってなに!?私は本当に慎ちゃんのこと」

「羽留うるさい。いい加減にしねえともう口聞いてやんないぞ」

慎ちゃんはおにぎりを食べ終わり、立ち上がりながらそう言った。

そして上から私を睨む。