どこを歩いても好奇な目で見られるオレ、赤羽弾。




まぁそれもそうだろ。こんなチャラついた見た目だもんな…。







こうなったのは高校に入る前…親が死んだから。






人を失うのは初めてで、ツラさもあったが、反抗期だったオレは心底嬉しかった。オレを止めるヤツは誰もいないって、思えて。





今思うと、クズで最低だったなってら後悔してる。






で、ピアスを、開けまくった。







元々高校からは寮で生活するつもりだったから家や家具、両親の車とか諸々を、売った。あとは、両親の貯金、面識の無い叔父ならの援助金なんかを使って生活している。




家事も全部自分でしている。





そんな生活をして1年がたった春。





いつものように校舎裏のベンチで寝ようと思ったとき、先約が居た。






まじかよ、ダルとか思ったとき、会話が聞こえてきた。








「お前なんか、目障りなんだよ!!」






すっげぇ、暴言。





いじめか…。





1人の男子生徒を3人の男子生徒が囲っている図。




くっだらねぇ。





見なかったことにしようと思い、戻ろうとしたとき





思いっきり上半身が水で濡れた。パーカー下の制服にもかかるぐらい。





オレの存在に気づかなかったいじめっ子がホースの水をぶち当ててきた。








「あっ?」







自分でも少し驚くぐらい、低い声が出た。




その声に反応したいじめっ子たち。





いじめっ子もいじめられたヤツも同級生だった。







「クソしょーもねぇことすんな」
「は?お前だって同じこと、どうせしてんだろ?」
「見た目で判断するな!つか、お前らと同類にするな」






この見た目のせいで不良やらヤンキーやら、色んな奴らに言われる。






ま、荒れてる時期はあったけどな。






「そもそも、何でコイツいじめてんの?」





コイツは多分、同じクラスのやつで、コイツらは隣のクラスの奴らだと思う。





「コイツが顔が良いからって、調子乗ってんだよ」
「しょうもな。てか、お前らの方が調子乗ってね?」






ハッと笑ってやった。






「お前ら時間無駄にしすぎじゃね?」
「はぁ?」
「わざわざこんなとこ呼び出していじめるとか、めんどくせぇことしてんじゃん。いじめる暇があるなら勉強しろよ」





そう言って、睨みつけた





「うっぜぇ。行くぞ」





あっ、逃げてった。弱あヤツらめ。







「た…助けてくれてありがとうございます」






は?コイツ水かかってねぇじゃん。





よけたのがオレに当たったってことか?




だせぇのはオレじゃん。






「お前もさ、ノコノコついてくなよ。断れよ。
そうそう、オレのリュック持ってきて」






その数分後、駆け足で戻ってきたやつ。




そのまま、帰ってったけど。




リュックの中に入れてたTシャツを出して、着替える。





よし、寝よ。













-どれくらい、寝たかは分からない。




温かさを感じて起きた。





「…ん」





重たい目を開けて、体を起こす。




目に入るのは肩にかけられたブレザーと女子生徒。






「ん?これ…あんたの?」
「あっはい、そうです。起こしちゃってすみません」





何で謝ってんの?





「いや、助かった。寝過ごすとこだったから」





オレにこんなことしてくれるヤツっていたんだ…





さっきは昼休みで、今は、恐らく放課後だろう。





この女はリュックを持っているから。





「いえ、とんでもありません。…先輩はなんで半袖ですか?いつもパーカー着てるのに…」
「ああ…ジュースこぼしたから。てか、1年なの?さっき…先輩って」





水かけられたなんて言ったら驚くだろうからやめといた






それよりも…





コイツ、オレのこと知ってんだ…






どうせ悪い噂でも聞いたんだろうけど






「あっそうです。…1年5組の横川美空です」







よこかわみそら?









なんか聞いたことあんな…




あっ、そうだ





男子が騒いでるやつだ







"頭のいい美女" "なんでもできる女神"






とか、言ってたような…。





女に興味無いけど、確かに容姿は整っていると思う







「へー、頭いいんだ」
「えっ先輩も5組ですよね?」
「まーね」






別に勉強が好きなわけではない。






物覚えが昔から良かったのと、良い会社に入って稼いで楽したいだけ。







そんなことより…






「てかさ、オレのこと怖くないの?」






オレと話す女子は明らかに"怖い"って顔しながら目をそらすのに。授業でしか、話したことないけど。






逆に横川は、目合わすし(オレが目を逸らしたくなるぐらい)、なんなら笑ってるし…。








他の女とは、違う。






「どこが…ですか?」
「外見とかこの無愛想のところとか」
「思いません!むしろかっこいいです!」







はっ…?







かっこいい?初めて言われた







言いきる横川を見て、不覚にもドキッとしてしまった。






「そっか」






って流したけど、本当にびっくりしてる。






オレのことかっこいいって言うやついるんだ。







社交辞令的なやつかなって思ったけど、横川の本心だったらいいのにって理由はわかんないけど、思ってしまった。






「逆に聞きたいんですけど、何で私とこんなにお話してくれるんですか?」
「んー…雰囲気?苦じゃないから」






やっぱり他の女とは違う






これが何かは知らないけど







「ありがうございます」






お礼、言われた






多分、凄く純粋で心が綺麗なんだろうなぁ…






「なんか、横川ってら面白いね」







本当に思ったけど、オレの言い方?表情?のせいでちょっと戸惑ってる





伝わってなさそうだけと、まっいっか。








「そろそろ帰ろっかな」






リュックを肩にかけて立ち上がる。





流石にそろそろ寒くなってきた







「送ってこか?」






あっ、ミスった。






変な感じになったけど、そんなの気にしない。






「あっ私、寮なんですよ」
「じゃあ、一緒に行こ。オレも寮だから。」





送ってく時まだ話せるって思ったんだけどな…










「先輩って優しいですよね」
「はっ?」





突然、そう言われてびっくりする。





それも、初めて言われた。







「だって寮に住んでいるのにわざわざ送ってくれようとしてくれたところとか、足長いからもっと歩くの速いはずなのに合わせてくれるところとか。先輩が優しいからできることですよね?」







えっ…






そんなつもりはなかった







「えっ、自覚ないんですか?」
「ない」






オレ以上に驚いている横川。












「あっオレ、325号室ね。じゃあね」







それが何だ?ってら思うだろうけどわ一応言っておいた。





「あっはい。さようなら」







左手を挙げてヒラヒラさせておく。














もっと、一緒に居たかったな…






あ〜、オレって…横川のこと











"好きなんだろうな"









初恋か…。









付き合いたい








明日、告白しよっと。










お互いを知ってからとか、そんな面倒臭いことしたくないし、気持ちを伝えることで意識して貰えるかもしれない













絶対幸せにするし、優しくするからオレの横にいてくれないかな…