愛していると言えなくて・・・

今年の冬は特に寒いような気がする。

世間では暖冬だなんて騒がれてるけどちっとも実感が湧かない。

特に俺みたいな仕事している奴には本当にきつい。

まぁ夏は夏で暑くて困るんだけど・・・。

そんなどうでもいいようなことを考えながら、

油まみれになった手で汗を拭う。

きっと外に出られないような顔になってるんだろう。

「よう、そっち終わったか?」

俺の二つ上の先輩、西さんが声をかけてきた。

「はい、ちょうど終わったとこです。今日取りに来るんでしたっけ?」

今、修理が終わったばかりの真っ白なセダンを見ながらたずねた。

「夕方来るっていってたなぁ。そろそろじゃないか?」

時計を見ると5時10分前。

日のたかい夏だけあってまだまだ明るいが少しずつ西日が

差してきたみたいだ。

「じゃあ、洗車しときますね。」

俺が働く小野田自動車ではどんな小さな修理でも、作業後は

洗車をして返すのが決まりだ。

「あぁ、いいよ。お前今日残業駄目なんだろ?」

そう。今日は以前から定時で上がらせてもらえるよう頼んで

おいたのだ。

「でも、まだ終わってないっすから・・・」

「あとは、俺がやっとくよ。もう上がっていいぞ。」

「さっすが西さん。だから俺好きなんすよぉ。」

満面の笑みで答える俺。

「そのかわり・・・今度一杯おごれよっ!」

西さんがコップをもつジェスチャーで答えた。

「恩にきります! じゃあさき上がります。お疲れ様です!」

「おう、おつかれ!」

俺は帰り支度を始めるため作業場の奥のロッカールームに向かった。