やっと約束の10時前になった。

まじ、楽しみ。

しかし、ホント大変だったぜ。

昨日、俺が優羽と話してるとこをバッチリ一ノ瀬大樹に見られてったぽくて後で個別に問い詰められてな…。


まあ、俺の家柄とあいつの容姿を考えると、自分の大切な売り物を俺に取られるのが怖かったんだろうな…。

クソッタレが。

相変わらずのゴミっぷりだな。

あのジジイ。

まあ、いーや。優羽とデートさえできれば。


よっし、時間セーフ。これで優羽に怒られずに済むな。

「おっせーな。優羽。自分で言っといて遅刻はねーだろ。」

「悪かったわね。ギリギリで。」

うおっ、

「びっくりするじゃねーか。声くらい最初にかけろや。」

「だって、あなた目当ての女がゴロゴロいたし…?」

「あぁ。それは悪かった。」

「なーに?なれすぎてよくわからないって?」

「まあな。」

「いったい今まで、何人の女を泣かせたの?」

「星の数」 

「な!?」

「へぇ、なに優羽。以外と初心なの?」

「ち、違うわよ!そんなわけないじゃない!」

強がってるな。

「ふーん。じゃ今俺とキスしよー。」

「はぁ!?なんであんたなんかと!」

「えー、ダメなの?」

「だ、ダメに決まってるじゃない!」

「えー、残念。」

「そ、そんなことより早く行くわよっ!」

「はーい。」

かーわい。

「で?どこに行くの?エスコートしてくれるんでしょ?」

「もちろん。まずはこの近くの雑貨屋に行こうか。」

「雑貨屋?あー、あそこね。場所は分かるから早く行きましょ。」

「そう焦んなって。」

「べ、別に焦ってないから。」

「へえー、やっぱり行き先ラブホに変更する?」

「しないし、行かないわよ!」

「えぇーすぐに気持ちよくしてあげるのに。」

「つっ!?き、気持ち悪いのよ!発想が!」

「手厳しいね。」

「当たり前よ!」

「お、そんなことより着いたみたいだぜ?」

「えっ?ほんとだ。」

「じゃ、俺は外で待ってるから好きなの見てきていーよ。あ、でも会計は俺がするから決まったら呼んでね?」

「いいよ。会計くらい自分で払えるし。」

「まあまあ、俺に甘えとけって。」

「そ。ならよろしく。」

「おー、まかせろ。」

二十分後

「ちょっと、決まったわよ。」

「うーす。」

「三百四十円でございます。」

「は?」

「どうかされましたか?」

いやいやそんなことあり得んのか?

四大財閥の令嬢だぞ?一回の買い物が三百四十円だなんてあり得るか?

俺でさえ二千円は使うのに。

それともいいものがなかった?


いや、それも違うな。

雑貨屋の看板を見た途端に目が輝いていたのをしっかり見ていたし、

じゃあなんで?


「お、お客様…?」

「あぁ、ごめんね。じゃあカードで。」

「はい、かしこまりっ!?」


まあ、そりゃ驚くわな。だってブラックカードだし。

「ご来店ありがとうございました。またのお越しをお待ちしてます。」



「あ、あの…。猫ちゃんのキーホルダー買ってくれてありがとう。」

猫ちゃん!!?

「優羽って猫のこと猫ちゃんっていうのか!?」

「そ、そうよ。なにか悪いっ!?」

「いやかわいーなと思って。」

「つっ、も、もう!これ以上褒めないでよ!恥ずかしいからっ!」


「は?お前…誰?」

「なっ!どういう意味っ…?」

「いや…可愛すぎてびびった。」

「つっ!霧崎くんなんて嫌いっ!」

「なあ、お前おれの…お」

「なあ、あいつ一ノ瀬さんじゃね?」

「え?あー、ほんとだぁ!一ノ瀬さんじゃん!」

「いーちーのーせーさーんっ!」

「!?」

「田中君と秋山君…どうしてここに?」

「いやいや、僕達があなたの居場所を把握してないときなんてありませんよ。常に悪いやつから守っているのですっ!」

「そ、そうなんだ。でも今私別の人と遊びに来てて、後にしてもらえる…?」

「別の人…?は?ちょっと一ノ瀬さん。誰こいつ?まさか、僕という彼氏がいて他の男と遊んでたの?」

「おい、優羽。お前彼氏いたのか?」

「い、いないっ!」

「そんな…いくらなんでもひどいですよ…彼氏の僕のことを忘れたなんて…」

「だから、違うの!あなた達はクラスメイトよ!」

そろそろ、止めに入るか…

「おい、お前らおち…」

「もう、いい!一ノ瀬さんなんて大嫌いだぁ!」

「は?」

「ふぅ。やっと帰った。なんで休みの日まであいつらに会うのよ。ついてないわね。」

「で?あいつらは?」

「ああ、言ったでしょ?ただのクラスメイトよ。」

「いや、クラスメイトっていうかストーカーじゃね?」

「す、ストーカー?誰が?」

「いや、あいつら。」

「田中と秋山?」

「ああ。」

「それは、ないわ。だって私なんかをストーカーしても得しないし。」

「お前…まさか無自覚か…?」

「無自覚…?」

まさか、ほんとにこんなやつがいるなんてな。

「いや、なんでもねぇーよ。それより飯食わねぇー?腹減った。」

「そうね…。行きましょうか。」

その後は一緒にお好み焼きを食べたり、ボーリング行ったり、今話題らしいスィーツも食べた。

「おい、優羽。この後どうする?」

「はあ?なに、もうネタ切れ?」

「まあ、な。」

「でも、デートプラン考えてきたんでしょ?」

「次はなにするって書いてあるの?」

「観覧車。」


「!?観覧車!?」

「やっぱな、そういう反応されると思った。」

「私、観覧車大好きっ!行こうよ!」

「え…?」

「もう…なにしてるの?おいて行くわよ?」

「あ、ああ。」

「ふふ。観覧車っ!観覧車っ!」

可愛すぎか…

「まじ、反則だろ…、、」

「ねぇ、霧崎くん…?」

「ん?なに?」

「もし、さ、もしだよ?もし霧崎くんがよかったら…
私とまたデートしてくれない…?」

「つっ。優羽…まじでお前可愛すぎだろ。」

「霧崎くんっ!不意打ちはなしだよ…!」

「いーや、不意打ちのほうがお前の可愛い顔が見れるからな。お得だよ。」

「うぅ!霧崎くんのバカぁ!」

「あ、そーだ。優羽、俺のことは霧崎くんじゃなくて湊斗って呼んで」


「えっ!?呼び捨て?」


「できないのー?」


「無理…よ。恥ずかしいもん。」

「えー。優羽が俺の名前呼んでくれないと寂しくて死んじゃうよー。」

「し、死んじゃうの…?」

は?まじか。


「うん。」

「わ…かった。呼ぶ。み、み、。湊斗くんっ!」

「可愛すぎか…!」

優羽とそんな話をしているとブーッブーと誰かのスマホが鳴った

「あ…ごめん。私だ。」

「いーよ。出てあげて。」

「うん…ごめんね。み、湊斗くん。」

「はい、優羽です。はい…はい…真に申し訳ございません。はい、ただ今戻ります。はい…申し訳ございません。失礼いたします。」

「ごめん…湊斗くん…家に帰らないといけないみたい…」

「そうか…怒られてたみたいだけど大丈夫か?」

「うん…こんなのいつものことだよ。」

その時…多分無意識に優羽は自分の肩を掴んでいた。

それを見て俺は思わず優羽に手を伸ばし優羽の肩に触れた。

するとそこには……大きなアザがあった。


紫色の大きな…アザが…


優羽の白いきれいな肌の上に…

「おい、優羽これはいったいどういうことだ?」

「は!?なんで見たのよ!お願い!このことはだれにも言っちゃダメ!お願いっ!」

「なんでだよ!お前は虐待されてるんだぞ!?いいわけねぇだろ!」

「ダメ…!お願い!言っちゃったら湊斗くんが危ないの!やめて…!」

「俺が、危ない?」

「そう…今までにもいたんだ。湊斗くんみたいに心が綺麗な人が。それで私を助けてあげるって言って警察に届けてくれる事もあった。でも…」

「でも?」

「でも…みんな殺された。」

「は?殺された?誰に?」

「お父様…にっ!」

「だからお願いっ!やめて!もうこれ以上私のせいで大切な人を死なせたくないのよ!」

「優羽…」

「私は大丈夫だから!ほんとに大丈夫だから!心配しないで!」

「でも…」

「湊斗くん!私なら大丈夫だよ?」

「わ…かっ…た」

「うん…それでいいんだよ。湊斗くん。君の選択は賢いものだよ。」

「……」

「じゃあ、またね。また会おうね。」


「あぁ。またな。」