初恋、それはこんな気持ちで――。

 数分歩くとバス停に着いた。
 湊にいちゃんはすぐに時刻表を確認する。

「あ、ごめん。バスが来る時間、平日の方調べてたっぽい。平日と休日の時間違うから、ちょっと待つわ」
「そっか……」

 バスは9時55分にくるみたい。
 スマホで時間を確認すると、今は9時35分。そばにあったベンチに座って待つことにした。

 ぼーっとしながら、散歩している犬と人を眺めていたり。待っている時間が長く感じる。

「なんか、亜結奈ちゃんとふたりで出かけるのって初めてだよね?」
「そうだね、湊にいちゃんと出かける時はいつも叶和くんも一緒だし。なんか不思議な気分」

 そう、いつも叶和くんと一緒。
 仲良くなったのも湊にいちゃんよりも叶和くんが先で。

 まだ小学校に行く前の時に、叶和くんたちが隣に引っ越してきた。

 たしか、私が家族と一緒にどこかに出かけるために車に乗ろうとしていた時だったかな? 家の前で湊にいちゃんとボール遊びしていた叶和くんが「どこ行くの?」って私に話しかけてきた。私は人見知りだったから、その時は返事が出来なくて……。でもそれからも沢山話しかけてくれて、いつの間にか今みたいに仲良くなっていた。

「そういえば叶和くん、まだ怒ってる?」
「うーん、ちょっと俺に対して冷たいかな? さっき何も言わずに自転車乗ってどこかに行ったわ」
「そっか……。昨日ね、私と湊にいちゃんが付き合うの嫌だって、私たちのことムカつくって言ってたの」

 ムカつくって言われたことを思い出して心が痛くなる。

「あぁ、やっぱりそっか……」
「やっぱりって?」
「……あ、バス来た」

 話の途中で私たちはバスに乗った。