初恋、それはこんな気持ちで――。

「じゃあ、休みの日、近くにある〝きさらぎ遊園地〟にでもいこっか?」
「遊園地?」

 きさらぎ遊園地は昔からある、小さな遊園地。小さい頃によく行っていた記憶。叶和くんの家族とうちの家族、一緒に行った時もある。

「うん。亜結奈ちゃん、今週の日曜日大丈夫?」
「大丈夫だけど……」
「はい、じゃあ決まり!」

 遊園地デートが決定された。なんか流された感じがする。でも久しぶりの遊園地、楽しみかも。

 ずっと繋いだままの手が気になって、私は視線を手に向けた。

「あの、手が……」
「あ、そうだね」

 ぱっと手が離れた。

「じゃあ、ちょっと電話で友達に呼ばれたから行ってくるわ、またね!」

 そう言って湊にいちゃんは外に出ていった。

 湊にいちゃんの背中を見送った後、ふと思う。

 今のドキドキって何だったんだろう。男の人と手を繋いだりしたことなんてないから、それで緊張しちゃったから? 相手はカッコイイ湊にいちゃんだし。

 そう考えていたらいつの間に2階から降りてきていた叶和くんと、目が合った。そしてぷいっとされ、叶和くんはキッチンの方へ行った。

 いつから聞いていたんだろう。
 叶和くんがもし今の話を聞いていたらどう思っているんだろうって、すごく気になった。私もキッチンへ向かう。

「ねぇ、今の話聞いてた?」
「……いや、何も」

 そう言いながら冷蔵庫から炭酸水のペットボトルを取り出す叶和くん。

 返事をした時の間と語尾がちょっと上がる感じ。それに、目がちょっと泳いでた。私、叶和くんとずっと一緒にいるから、嘘をつくと何となくわかるんだよ――。

 多分、聞かれてた。

 でも聞いてないっていうから、これ以上は聞けない。

――ねぇ、叶和くん。私と湊にいちゃんがデートする話を聞いて、どう思ったの? なんで聞いていないふりをしたの?