「叶和、どうした?」
「別に……」
「そっか」

 叶和くんは、いつもよりも明らかに声が低いし表情もムッとしてるし。不満がありそうな雰囲気。どうしちゃったんだろう……。

「で、どうする? 付き合ってみる?」
「湊にいちゃんと私が?」

 返事に困っていた時、湊にいちゃんのスマホがなった。

「あ、話の途中だけど電話だ。考えといて? ちなみに俺は、亜結奈ちゃんのこと、可愛いと思っているよ!」

 そう言って湊にいちゃんは微笑み、2階にある部屋へ電話をしにいった。
 
「付き合うって、誘われちゃったよ。どうしよ……」

 私は叶和くんをちらりと見た。

「どうしよって、何を迷ってるんだよ」
「だって、湊にいちゃんはカッコイイし、優しいし……それに、付き合うの興味あるし?」
「はっ?ってか何? 亜結奈は兄貴が好きなの?」

 なんでいきなり私が湊にいちゃんのことを好きって話になるの?

 しんとなるリビング。
 少し経つと、叶和くんはぼそっと不満そうに呟いた。

「亜結奈と兄貴が付き合うのはなんか嫌だ」

「なんで?」
「分からないけど……なんか想像しただけでイラッとする……」

 私が訊くと、叶和くんがそう答える。

 その言葉の意味が気になった。

「どんなことを想像したの?」
「手を繋いでデートしたり、抱きしめあったり……あぁ、亜結奈も兄貴も、なんかムカつく」
「なんで私がムカつかれてるの?」
「知らね!」

 そう言って叶和くんも2階に行っちゃった。ぽつんとひとり残される。