自転車で走り出してから時間が経ったけれど、叶和くんは何も話しかけてこないし、私も話しかけれなかった。

 私たちの世界は止まって、周りの風景だけが流れているように感じる。

 会話が出来ないのは告白された時の空気がまだ、さまよっているからかな? 

 私に恋したかもと言われた。

 そして「俺、亜結奈の初恋の相手になりたいし、恋人にもなりたい」とも。その言葉も、言われた時の叶和くんの真剣な眼差しも、ずっと頭の中から離れない。

 さっきは中途半端に会話が終わっちゃったけれど、嫌だからあんな反応したわけではなくて、すごく驚いたからあんな反応をしてしまった。

 どう返事をすればいいのか、すぐに答えを見つけられなかった。

「さっきは、変なこと言ってごめんな。気にしないで」

 叶和くんが前を向きながら言った。

「変なことじゃないよ……急に言われたから、なんて返事したらいいのか、よく分からなくて」
「……だよな」

「……でもね、言われて嫌ではなかったよ。言われてから叶和くんと付き合うことを想像したんだけど」
「想像したの? どうだった?」

まだ話の途中なのに、早口で質問してきた叶和くん。