「そうだよな、難しいこと言ったな…嫌な思いさせてごめん……」
「いや、何もあやまることはなくて……」

 ちょっと気まずい雰囲気になる。
 言わなければ良かったのか?

 無言でいると、汽車は止まった。

「ありがとうございました」
「お父さん、また乗ろうね」
「乗ろうな!」

 自分たちは静かだから、周りの声がはっきりと聞こえる。

 まっすぐ兄貴のいるベンチに向かった。

「あれ? 早いな」
「うん」

 兄貴がそう言うと、俺は低めの声で返事をした。

「叶和はチケット、一日の券じゃなくて回数券の方買ったの?」
「そうだよ」

 残っている3枚を兄貴に見せた。

「そっか、そしたら最後にみんなでなんか乗る?」

 3人は辺りを見回した。

「私たち、ゴーカートだけまだ乗ってないよね?」
「そうだな」

 ゴーカートはひとりで乗るのと、2人で乗るのがある。誰がひとりで乗るんだろうって考えたけれど、結局みんなひとりで乗った。

 それからレストランでお昼ご飯を食べて、バスの時間に合わせて遊園地を出ることにした。

「楽しかった?」
「うん、久しぶりだったけど楽しかった。誘ってくれて、ありがとう」

 出口に向かいながら、兄貴と亜結奈が話している。さっき気持ちを亜結奈に伝えた時から、俺は亜結奈に上手く話しかけれずにいた。

「叶和、自転車でここまで来たんだろ?」
「そうだけど」
「そっか、じゃあ帰りは俺らと別々に帰るんだな」
「う、うん」

 また亜結奈と兄貴はふたりきりになるのか……。

「じゃあ、またあとで」

 遊園地を出て、俺だけ自転車が置いてある場所に向かった。