初恋、それはこんな気持ちで――。

 兄貴がお化け屋敷から出てきた。

「亜結奈ちゃん、いた! 振り向いたら亜結奈ちゃんいなくなってて、すごい心配したよ」
「あ、そうだよね。湊にいちゃんからしたら私、急にいなくなったんだよね……」
「あれ? 叶和、なんでいるの?」
「……兄貴と亜結奈がふたりきりでいるのが嫌だったから」

 兄貴にも本当の気持ちを伝えた。

「何、一緒に来たかったの? いいよ、一緒にまわろ?」
「いや、そういうことでなくて……」
「亜結奈ちゃん、次行こっか」

 兄貴には俺の気持ちが伝わらず。 
 でも、伝わったけれど、跳ね返されたようにも感じた。

 そして兄貴は亜結奈の手をとった。

 その光景を見るだけでふつふつと怒りのような感情が湧き出てくる。そして〝俺の亜結奈なのに〟という、独占欲のようなものも。

 ここ数日で感じる気持ちは、初めて感じるものばかりだった。

 俺はふたりが繋いだ手を無理やりはがす。そして亜結奈を強くぎゅっと抱きしめた。生まれて初めて亜結奈をぎゅっとする。亜結奈の感触は、すごくふわっとしていて。

 ぎゅっとすると、愛おしくて、亜結奈と離れたくない気持ちが沢山心の奥から溢れてきた。

「叶和くん?」
「嫌、だ……」
「えっ?」
「亜結奈が兄貴と付き合うのも、手を繋ぐのも……もう、ふたりきりでいるのも。本当に、嫌だ」

 悔しさも、泣きたい気持ちも追加して降ってくる。だけど、亜結奈にだけは涙をみせたくない。ぐっと泣くのを我慢した。