源さんの家に引っ越してきて数日がたち、とうとう夏休み最終日を迎えた。


明日になったら全く新しい環境に一人で飛び込まないといけないのだと思うと、明日が来るのが嫌で嫌で仕方がない。

そんなことを思いながら、お気に入りの景色が見える部屋で、洗濯物を畳む。

本当は源さんが「どうせ家にいるから家事は任せて。」と言ってくれたのだけれど、住まわせてもらっているのにそれは申し訳無いと私がごねたところ、家事は一緒にやるということになった。


「ふぅ…」


源さんが近くにいないことをいいことに、私は深いため息をついた。

台所の方から包丁の音が聞こえてくるから、多分今は昼食を作ってくれているのだろう。

広い部屋に響く包丁の音を聞きながら、あぁ、と小さく唸る。


ようやくこの生活にも慣れてきて、少しずつ源さんとも打ち解けてきたのに、なぜわざわざ行きたくもない場所に行かなければならないんだ。

そんな何度目かもわからない愚痴を心の中で呟く。

仲がいい人どころか、知っている人さえもいない所にこれから毎日行かなければならないなんて、考えただけで気が滅入る。