なんにも考えない時間が
 ただ過ぎていく
 きみと居るだけで
 ゆったりとした時間が
 ただ過ぎていく

 きみが紙をめくった
 本の背表紙を眺めて
 きみが髪をかき上げた
 耳もとに目を奪われて

 なんにも考えられない時間が
 まるで指の隙間から溢れるように
 ただ流れていく
 静かな時間が
 言葉もないままに

 テーブルに置いた
 コーヒーカップの湯気だけが
 もう昇らなくなって
 それだけが
 時の流れを知らせてくれる
 
 そんな週末の午後

 やがて突然
 店の奥にかかった古時計が
 刻の鐘を鳴らすと
 囚われていた心が
 急に現実へと引き戻される

 顔を合わせた
 きみが

「お腹すいたね〜」

 そう言って
 背伸びしながら
 にっこり笑った

 たぶんこれが
 幸せなんだろうって
 ようやくぼくの思考は動き出して

 でも心は半分
 きみのえくぼに
 まだ囚われたままで