高校での新生活は、想像していたより楽しかった。


嬉しいことに、中学からの友達である松屋沙奈とクラスが一緒だった。


おかげでぼっちは回避することができ、コミュ強の沙奈の仲介のおかげで新しい友達も数人作ることができた。


しかし、私にはまだ課題が残っている。


「野球部の友達、作りたい……」


まさかのまさか。私のクラスには野球部に入部する予定の子はいないらしい。


野球部がいない代わりなのか、私のクラスにはサッカー部やらバレー部やらのさわやかマッシュが大量発生している。


目にかかりそうなサラサラ前髪にはもう見飽きた。


「さわやかマッシュなんて求めてないのにっ。短髪もしくは坊主のかっこいい野球部の友達が欲しいなー」


私はお得意の独り言を言いながら、家路をたどる。


クラス決めをした先生に対しての皮肉をこめて、道端に転がっていた石ころを思いっきり蹴った。


石ころは高く飛んだ。どこまで行くのだろうかと見届けた先には……男の人がいた。


「わっ、わっ!!石危ないっ!!!」


「うお、あっぶね」


危機一髪。石の先にいた男の人は、かろうじてそれを避けてくれた。


「本当に、本当にすみません!!!怪我はないですか?!」


完全に私の注意不足だ。関係のない人を巻き込んで迷惑をかけてしまったことに、その人に対しての申し訳なさでいっぱいになった。


「俺なら大丈夫ですよ」


「よかった…迷惑をかけてしまって申し訳ございません」


私は深く頭を下げた。


「頭上げてくださいって。あの、同い年ですよね」


「は、はい?」


男の人は、私の制服のリボンを見てそう言った。


そういえば私の通っている学校は、学年でリボンの色が違っている。私の学年は濃い赤色だ。


頭を上げて再度男の人を見ると、私と同じ高校の制服を着ていることに気がついた。


「えっと、お名前は?」


相馬京(あいばけい)です。あなたは?」


一瞬、時が止まったかと思った。


相馬京って……。


「私は藍沢律(あいざわりつ)と言います」


私がそう名乗ると、京は「えっ?!」と声を出して驚いた姿を見せた。


「藍沢律って、入学式でめっちゃ大きい声で返事してた方ですよね?」