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「ーーはあ、大変だね……。西宮くん疲れてない?大丈夫?」
「俺は全然大丈夫です。でも先輩は頑張りすぎだと思います」
「んー……三年生の人たちにはなんだかんだお世話になってるしね。私の出来る限りで最高の卒業式にしたいんだ」
ーーーガゴンッと大きな音を鳴らして冷たい飲み物が落ちる。
それを取るために、少し重たい膝を折ってしゃがんだ。
「……美澄先輩は、かっこいいですね」
「え?」
隣を向くと、いつもの大きめな瞳とは目が合わず、白い肌にふと影が落とされていた。
「……西宮くん?」
「……俺、優柔不断だし気弱だし、すぐに逃げ道探すタイプだから」
冷たい水の容器に張った霜がゆっくりと溶けて、雫になって落ちる。
西宮くんは、それが自分の手につたっても気づかずに話し続けた。



