「照れてます?」


「照れてないです」


「残念」



即答してしまったのが悪かったのかもしれない。


隣で吹き出す様子が見れたから、軽く小突いておいた。



残念、という声色は本当にそう思っているのか読み取れない。


だけど、残念だと思ってくれていたらな、と思ったのは何でだろう。



静かに速まる心臓は、理由が分からないまま走り続けている。



ふたり分の足音が道路に響く。私たちの間に言葉がなくても、全然苦じゃない。



「……悧來」


「はい?」


「……ありがとう」



いろいろ、と付け加える。

具体的に示そうとしたら、思ったよりもたくさんあった。



「ふ、いろいろって」


「いろいろはいろいろだよ」


「なんか噛みそうですね、それ」



なんとなく、なんとなくだけど。


夜のせいか、はたまた別の理由か。


いつもより悧來の笑顔が輝いて見えた。