「あんな、全部が洗練された動きは見たことないです。努力っていう言葉だけじゃ済まされない」
恋奈先輩は、もっと肩の力を抜いた方がいい。
「ーー……はじ、めてだ」
「……先輩?ちょ、泣いてるんですか…!?」
透明の雫がひとつ溢れてしまえば、もう堰を切ったように止まらなかった。
……私、先輩なのになあ。
今はあんたの方が先輩みたいだよ。
生徒会長として、本当は涙は見せちゃ駄目なのに。
どうしても止まってくれないそれは、優しく悧來が掬ってくれる。
「……ふふ」
目の前で慌てふためいている後輩が、なんだか面白い。
急に笑い出した私を見て、もっと焦ってる。
女の涙に慣れてないんだろうなあ、モテるもんね。



