「可愛い」という言葉の魔法の効果は、切れてしまったみたい。


さっきまでの熱が、あっさりと引いてゆく。



「…そっか、まあ悧來ならいるよね」




そんな、当たり障りのない言葉を返すので精一杯だった。


精一杯の笑顔を向けるけど、たぶんひきつってる。



「……せんぱいは、」


「なに?」


「……いや、なんでもないです」



その後は、何をしたかよく覚えてない。


ただ分かってたのは、無理に明るく笑い続けてたっていうことだけ。



*
 ·





「もう夕方ですね、そろそろ帰ります?か」 


「…っあ、うん、そうしよっか」


「……センパイ、お昼あたりから元気ないですよね」


「……そんなことない、よ」




心配してくれてるのかな。

でも、今はそれがつらい。




「…ねえセンパイ、聞いていい?」



ーーさっき、俺が好きな人いるって言って、どう思った?



「っ…どうって……何も、」