「ーーあの、」
不意に、手をぎゅっと握っていた。
「ーーーき、協力してくれませんか」
「………え」
思ったものと、違う。その驚きと。
緊張と期待が現れている、その表情を見たときの焦り。
それがはっきりと顔に出た私が、彼女の瞳に写されているのがわかる。
「わたし、悧來くんの好きなんです」
「…ああ、そういうこと」
まるで今初めて知った風に装う自分が、情けない影として地面のコンクリートに写る。
声、震えてないかな。強ばってないかな。
“冷静な生徒会長”を振る舞って、その場から立ち去ってしまいたいのを必死で堪える。
……私って、こんなに恋愛にたいして臆病になってたのか。
「なんで私?」
「…美澄先輩は悧來くんと仲良いって聞くし、悧來くんのことよく知ってるかな……って」
あんまり関わりのない私に協力を仰ぐ彼女の決心は相当なもの。
その強い瞳に、若干気圧される自分がくやしい。