「瑠花!」

波が瑠花ちゃんを追いかけていった。

二人きりの病室に、静かな時間が訪れる。

「……瑠水ちゃん、無理して笑わなくていいんだよ?」

相変わらず穏やかに微笑む瑠水ちゃんを見て、言葉がこぼれた。

瑠水ちゃんが微笑むのをやめて、控えめに目を見開いた。

「悲しいなら、泣いていい。怒りたいなら、怒ったらいい。瑠花ちゃんやご両親の前でできないのなら、僕の前では無理しなくて良いんだよ」

瑠水ちゃんのきれいな瞳から、一筋の涙がこぼれた。

そっと彼女に近寄る。

瑠水ちゃんは、そっと口を開いた。

「私、死にたくないです……。出来れば、瑠花と一緒にいたいです。この……、この病気さえなかったら……!」

瑠水ちゃんは苦しげに自分の服を掴んだ。

「……そっか。そうだよね、瑠花ちゃんと一緒にいたいよね。だから、君がしたいようにすれば良い。勉強したくないんだったら、しなくて良い。僕も、手伝うから」

ゆっくりと、瑠水ちゃんが笑顔になっていく。

口の端っこがゆっくりと上がり、目が柔らかく垂れ下がる。

初めて見た瑠水ちゃんの本当の笑顔は、とても綺麗だった。

この笑顔を守りたい。

僕は、そう思った。

しばらくすると、瑠水ちゃんが不思議そうに口を開いた。

「……どうして、私に良くしてくれるのですか?」

「それは……」

そんなの、答えは一つに決まってる。

「それは、君に、振り向いてほしいから」

瑠水ちゃんがそっと首を傾げる。

「今は意味が分からなくて良いよ。僕が一年かけて、たっぷり教えてあげるから」

そっと微笑み、病室を出た。

僕は、瑠水ちゃんに、振り向いてほしい。僕のこの思いに、気づいてほしい。

だから、気づいてくれるまで一緒にいるよ、『僕のお姫様』