「先輩!」
「離れたすぐに絡まれるんじゃねえ」
「ごめんなさい」
と謝ると先輩は私の手を掴んで走り出した。
「まあ、話は後だ!行くぞ!」
「はい!」
「また、逃げられる!追え!」
私と朔夜先輩はひたすら走った。
「まだ、追ってくるのか?」
「先輩、私の家に来ませんか?」
「でも、追って来られたら...」
「電車にさえ乗れたら、私達の勝ちです!」
朔夜先輩は少し考えて頷いた。
「分かった。駅までなら、この路地を使えば、すぐ着く」
そして、駅に辿り着き、電車に乗る事が出来た。
電車は昼の時間だったからか、誰も乗ってなかった。
「良かった。乗れましたね」
「ああ」
朔夜先輩はドアにもたれかかった。
「朔夜先輩、大丈夫ですか?」
「久しぶりに走り回ったから、体力切れたんだよ。
日菜も居るから。ずっと、必死だったんだ」
朔夜先輩...。
「ありがとうございます」
「どういたしまして」
朔夜先輩が、ふと、窓を見た。
「日菜、あそこ見てみ」
私も窓を覗くと不良達が私達を探しているようだった。
「もう、大丈夫だな」
「はい」
「...あの日も追っかけられて二人で電車に乗ったよな」
「えっ?」
「覚えてるか。俺達が出会った時の事」
「はい」
「二年前、バレンタインの朝、俺が喧嘩して喧嘩相手の仲間から逃げてる時、日菜が居て、日菜が俺を庇ったものだから、彼女って勘違いされて」
「朔夜先輩が私を助けてくれて、一緒に駅まで走りました。
学校に着いた後、クラスの教室まで送ってくれました」
「その日の放課後、日菜が告白してくるなんて思って無かった」
「出会う日よりも前から、喧嘩ばかりしてるけど、優しい朔夜先輩がずっと、好きだったんです。人助け、たくさんしてるの、知ってますよ」
「嘘だろ?」
「嘘じゃありません」
「それでいきなりバレンタインで告白ってある意味すごいな。俺、驚いた」
えっ!
「それなら、何で、付き合うって言ったんですか?!」
「俺は、」
朔夜先輩は私を強引に抱き寄せ、私の耳元で囁いた。
「日菜の事、知りたいと思ったから、だめか?」
朔夜先輩の一言で、私の心臓の鼓動は一気に上がった。
「...だめじゃ、ありません。嬉しいです」
「好きだ」
「知ってます」
そして、私は朔夜先輩の頬にキスをした。
驚いたようで、少し顔が赤くなった。
「私も好きです。朔夜」
「急に呼び捨てするな。後、これするなら」
と自分の頬を指差し、次は私の唇、自分の唇に持っていった。
「...ここだろ」
朔夜先輩の顔が近くなり、私の唇に温もりが重なった。