七月最後の土曜日、夏祭りの日。
わたしはお母さんに浴衣を着せてもらった。
浴衣で夏祭りデートって、一度はしてみたかったんだ。
「行ってきます」
「行ってらっしゃい。今日は何か進展あるといいね」
そう言って笑った莉苑ちゃんに見送られて、わたしは待ち合わせ場所へ向かった。
待ち合わせ場所には、柊くんが先に来て待っていた。
「お待たせ」
笑顔で柊くんに駆け寄る。
「浴衣、似合うね」
わたしの浴衣姿を見て、素直にそう言ってくれる柊くん。
「え?……ありがとう」
着て来て良かったな。
「結構混んでるね」
大規模じゃないけど、地元で毎年やっているお祭りだから、結構人が来てる。
「はぐれないように気をつけて」
「うん」
そう言われたそばから、押し寄せる人の波に流されそうになる。
「大丈夫?」
柊くんが手を差し伸べてくれて、わたしたちは手をつないで歩き出す。