あっというまに期末テストも終わって夏休み目前のある日。
わたしは柊くんと一緒に学校帰りの道を歩いていた。
日射しはすっかり夏らしくなって、緑の匂いが濃くなっている。
「もうすぐ夏休みだね。柊くんはすでに決まってる予定とかある?」
「うん。家族でアメリカに行くよ」
「アメリカ? 家族で海外旅行なんてすごいね」
「いや、父親の仕事の都合だから。家族旅行っていうわけでもないんだ」
「そうなんだ。いつ行くの?」
「8月に入ってすぐ、2週間くらいかな」
「そっか……じゃあ夏休みもあまり会えないかもしれないんだ」
学校では柊くんのファンの子たちの目があるから、あまり親しくしすぎないようにしてきた。
お昼休みもあまり一緒にお弁当を食べないし、放課後も毎日一緒に帰ってるわけじゃない。
だから、ホントは人目を気にせずデートできる夏休みを楽しみにしてたんだ。
「……ごめん」
柊くんが申し訳なさそうに言う。