――…ここはどこだろう?


薄紫の花がたくさん咲いている野原。


どこからか女の子の泣き声が聞こえる。


泣いているのは……わたし?


「どうしたの? なんで泣いてるの?」


「お姉ちゃんがもうすぐ手術するの。ママは〝大丈夫だよ〟って言ってるけど、お姉ちゃんが死んじゃったらどうしようって思うとこわいの」


「そっか。でも、お姉ちゃんの方がきっともっとこわいと思うよ。大丈夫、きっと元気になるよ」


「ホントに?」


「ホントだよ。ぼくも手術したことあるけど、今は元気でしょ?」


「…………」


「大丈夫だから、もう泣かないで」


「……うん」


「ここ、花がたくさん咲いてるんだね」


「このお花、しおんっていうの。わたしと同じ名前なんだよ。このお花大好きだから、お姉ちゃんにあげようと思って、ここに来たの」


「きみの名前、しおんちゃんっていうんだ。かわいい名前だね」