後日、国王と王妃、ミカエラは辺境の地で過ごすこととなった。
 農作業に従事して一国民として生活を始めるのだそうだ。

 一方、リディはぼうっと学院の屋上で空を見ていた。
 すると、彼女に人影がかかる。

「政務のほうはいいのですか?」
「ああ、ちょっと休憩だ」

 第二王子エヴァンは、次期国王として四大公爵に助けられながら政務をおこなっていた。
 「神位制度」は撤廃されたが、人々の記憶や意識からそれがなくなるにはもう少し時間がかかるだろう。

「ああ、疲れる。あの気難しいキルビス公爵と軍事話を話すと長い!」
「キルビス公爵は国防のトップ。あなたもよく小さい頃はしごかれてましたね」
「ああ、おかげで剣技は誰にも負けたことがない」
「よかったではありませんか」
「納得いかない……」

 エヴァンは不満そうに口を尖らせている。
 そうして少しの沈黙が流れた後、エヴァンは口を開く。

「なあ、リディ」
「なんでしょうか?」
「俺が王位欲しさに今回のことを企んだとか疑わないの?」

 二人は目を合わせずに空を見ている。

「そんな器用なこと、あなたにできっこないもの」
「ひどっ!」

 彼女の心を掴むまで何年かかるのだろうか、と彼は思った。
 こんな二人が未来の国王と王妃になるのは、もう少し先の話だ──。