「父上、あなたは国民から十数年不当に税を取り立てていた。そして母上もそれに気づいていらっしゃいましたね」
「なんのことだ……」

 国王も王妃もしらを切る。
 国王は冷静に対処しようとしているが、王妃は動揺を隠しきれずにわずかに手が震えている。

「兄上、あなたは国庫金に手をつけて、ルルア嬢の家に多額の金を渡していた」
「なんだとっ!?」

 ミカエラの行為を聞き、叫んだのは国王だった。

「お前はなんということをしたんだ!」

 ミカエラはバレないと思っていたのか、ガタガタと震えだして青ざめていく。
 ルルアもまずいと感じているのか、さっきまで得意げだった顔も白くなっている。

「四大公爵当主から私に要請がありました。『一級公爵書』をもって、一つ、国王と王妃、第一王子から王族の位を奪うすることとする。そして、もう一つ、不当な身分制度である『神位制度』の撤廃をする」
「なっ……」

 いくら国王と言えども、『一級公爵書』には逆らえない。
 王妃は絶望の色を見せ、その場にへたり込んで泣き始めた。

「父上、母上、兄上。これは私からの最後の願いです。国から出て行けとは言いません。ですが、その身をもって罪を償い、そしてこの国の現状を、民の声を聞いてください。百年前にできた「神位制度」が生み出した闇を、そしてあなたたちがその闇を広げてしまったことの罪を、その目で確かめてください」

 エヴァンが言い終えるのを見届けると、リディはミカエラに向かって言う。
「あなたはわたくしを『獅子』だから、と優遇した。そして、子猫のように弱いと嘲笑った」

 リディは力強く告げる。

「強い者が弱い者をいじめてどうするのですか。強い『獅子』が、弱い者を助けなくてどうするのですか。私はあなたが強さに溺れてしまわないことを願っていました……」

 リディはミカエラに背を向けて講堂を後にした──。