そうして数日後。
 準備万端で臨んだセラピア湖畔の花畑。

 むせかえるような花の香りと、風に揺れる花々。遠くには湖の水面が輝いている。爽やかな風景に立つフィーナを見るのは、なかなか悪くない。カミロは腕を組んだまま、軽く頷く。

 (しかし、不可解だ)

 花畑は、恋人達で溢れていた。
 右を見ても左を見ても、恋人達は花ではなくお互いを見つめ合っている。何をしに来たのだ、ここにいる者達は。花畑なのに、花を見ているのはフィーナくらいではないだろうか?

 そう思ってフィーナを振り返るが、彼女もそれほど花を見ている訳では無いようで。時折「きれいですね」だとか「良い香りですね」と呟くが、立ち止まり花を鑑賞する……というほどの興味は無さそうだ。

 黙ったまま後ろを付いて歩くフィーナが、果たして楽しめているのかも全く分からない。しかし彼女はここへ訪れたいはずだった。それには、なにか理由が?

「お前は、ここに来て何がしたかった?」
「え?」
「九人目の縁談相手と、ここに来るはずだったんだろう」
「は、はい。そうですが」

 何も分からないカミロは、直接彼女に聞いてみることにした。せっかくここまで来ているのだから、フィーナのしたいようにすれば良い。
 そう思い問い質したのだが、フィーナはなにか言いにくそうに口を開く。