「ねえ、チェリ様。どう思います?」
「お兄様の考えてることなんて、私にもわかんないわよぉ」

 夜、今度はチェリの部屋へと突撃した。
 彼女は美しい爪先にオイルを塗り込みながら、フィーナの相談などどうでも良さげに聞き流している。

「わけが分からないんです。ずっとこう……腕を組んで、黙ってるだけなんです……」
「フィーナに、ただ見蕩れてたんじゃなぁい?」
「そ、そんなわけないでしょう?」
「そんなことあるわよぉ。可愛いもの、フィーナは」
「ありがとうございます。でも、もしそうならお見合い九回も断られたりしないですよ」

 見合い相手としてカフェに現れたカミロは、すでに『本気』だと言っていた。スキンシップなどで本気にさせるまでも無く。

「あー、分からない……カミロ様が何考えてるのか、さっぱり分かりません……」
「単純に、『フィーナと結婚したいなぁー』って思ってお見合いしたんじゃなぁい? 私は大賛成よぉ。お兄様とフィーナの結婚」
「いやいやいやいや、あのカミロ様がそんなこと思うはずないでしょう」
「そうかなぁ。カフェでも案外『ケーキ食べる姿、可愛いなぁー』って思ってただけなんじゃなぁい?」
「やめて下さい! そのセリフ!」

 チェリの甘ったるい口調とカミロの仏頂面が、これっぽっちも混ざり合わない。何なのだろうこの全く似ない兄妹は。フィーナはますます混乱した。
 チェリに相談したのは失敗だったかもしれない……そんな後悔を抱きながら、フィーナは眠れぬ夜を過ごしたのだった。