中学2年生なんて、もう子供じゃないのに。
「希々は本当に着替えるのが遅いな。」
私は塚崎希々(つかざきのの)。
こうやって毎日のようにからかってくるのは幼なじみである吉原優吾(よしはらゆうご)。
何かにつけて私をケラケラ笑い飛ばすものだから、毎日仕返したいと思っている。
優吾は私の3個年上だけど、親同士が仲良いのと、家が近いのとで昔から一緒に過ごしてきた。
3つ上というのもあって優吾は大人っぽいから私の仕返しなんて気づきもしない。
どうしたらいいのか悩んでたところに、ちょうどいい日が訪れた。
4月1日。
そう、今日はエイプリルフールなの!
めちゃくちゃ嘘ついて優吾を何としてもからかってやりたいところだ。
「まぁね。じゃ、映画見に行こ!」
今日映画を見る約束を取り付けたのは私。
本当に映画を見たかったのもあって都合が良かった。
「今日、あそこの映画館でポップコーン30パーセントオフで売ってるらしいよ。」
早速今日1度目の嘘。
優吾はきっと割引されていないことを知って悲しむだろうな。
「それは嬉しいね。」
お、信じてるっぽい。これは期待度高めだね。
映画館に到着すると、売店に向かった。
何やらいつもとは違う看板が出ているらしい。
『本日限り!売店のポップコーンが30パーセント増量』
えっ……。
増量って、値段30パーセントオフと変わらないじゃん。
私は優吾にバレるくらい顔に出て落胆していたらしい。
優吾はこれでもかとニンマリ笑い、私に向かって勝ち誇ったような言葉を吐いた。
「おやぁ、嘘じゃなかったの?みたいな顔してるけど、大丈夫かい?」
何その話し方。
めちゃくちゃに煽ってくる優吾に私はカチンときた。
映画は普通に面白かったのだけど、ずっと仕返しを考えていて頭はそれでいっぱいだった。
お昼ご飯は優吾が選んでくれたレストランで食事をした。
すっごいふわふわのハンバーグがおすすめなんだって。
よし、ここでやり返すぞ。頼んだハンバーグを1口口に入れた。
お、美味しい……。本当にふわふわだ……。
で、でも決めたからにはやるしかない!
「どう?美味しいでしょ。」
「いや、あんまり?なんかもっと美味しいと思ってたからガッカリだなぁ……。」
あれ、ちょっと言い過ぎちゃったかな?
優吾は驚いたように目を見開いた。
さすがにまずかったよね……謝った方がいいかな?
「なーんて、嘘でしょ希々。」
下を向いていた顔を上げると優吾はいつも通りのニヤけた笑みに戻っていて、ちょっと安心した。